レノファの受難 ~3年間で答えを出せない現場~

「スタメンを固定できる」

「フォーメーションを固定できる」


この2つを達成できるチームは、まー、強いです。

スタメンに固定するに足る個の力(技量、メンタル、体力)を持つ選手がおり、その選手たちに最適なフォーメーションとシステムを与えれば、そりゃ上位狙えますよねって話です。

実際、過去5年間を遡って1、2位のチームを見てみると、ほぼスタメンとフォーメーションを固定しています。





【2015】


1位

大宮アルディージャ


〈主要フォーメーション〉

4-4-2

〈使用回数〉

42回


2位

ジュビロ磐田


〈主要フォーメーション〉

4-2-3-1

〈使用回数〉

42回





【2016】


1位

コンサドーレ札幌


〈主要フォーメーション〉

3-4-1-2

〈使用回数〉

40回


2位

清水エスパルス


〈主要フォーメーション〉

4-4-2

〈使用回数〉

41回





【2017】


1位

湘南ベルマーレ


〈主要フォーメーション〉

3-4-2-1

〈使用回数〉

34回


2位

V・ファーレン長崎


〈主要フォーメーション〉

3-4-2-1

〈使用回数〉

38回





【2018】


1位

松本山雅FC


〈主要フォーメーション〉

3-4-2-1

〈使用回数〉

40回


2位

大分トリニータ


〈主要フォーメーション〉

3-4-2-1

〈使用回数〉

33回





【2019】


1位

柏レイソル


〈主要フォーメーション〉

4-4-2

〈使用回数〉

20回


2位

横浜FC


〈主要フォーメーション〉

4-2-3-1

〈使用回数〉

22回




このように、上位のチームはフォーメーションを固定する傾向があり、各ポジションに25前後~35試合以上に出場しているスタメンが存在しています。

例外は昨年の2019年シーズンですね。

この2チームは、チームの最適フォーメーションを見つけてから無双モードに入ったという印象です。

この事から、

シーズン開始前に最適解が無くとも、シーズン途中で発見し、上位を狙えるというパターンも存在するということが分かります。




上位を狙うチームの特徴を踏まえた上で、レノファが上位に入れない理由を個人的に考察しましたので、今回はそれを書いていきます。




といっても、レノファがJ2に昇格した2016年からの考察ではなく、私の大好きな霜田さんが監督に就任した2018年からの考察をしていきます。




霜田監督の就任初年度となる2018年は、レノファ山口FCがJ2に昇格して以来最高順位となる8位を記録しました。

霜田監督を知る者として信じられない結果ですが、この頃から霜田ワールドの片鱗は出始めていたように感じます。

まず霜田監督は、自身の代名詞といえる4-1-2-3で華やかに監督キャリアをスタートさせました。

高木、オナイウ、小野瀬の強力な3トップを用意出来てましたので、一時期は1位にもなるというとんでもない成績を弾き出してました。

ところがこの年の7月31日に事件が起きます。

強力3トップの一角、小野瀬の移籍です。

この事件を皮切りに霜田レノファは勝利から遠ざかります。

そりゃ前半戦だけで10ゴールを記録したウイングの移籍ですからね。

これだけの個の力を持つ選手がいなくなるわけですからある程度は仕方ないと言えます。

小野瀬移籍後8試合未勝利だったわけですが、システムを3-4-2-1に変更することで何とか連続未勝利をストップさせました。

霜田監督の「困ったら3-4-2-1」の発芽はこの辺りからだったのかと感じます。


このシーズンは


〈主要フォーメーション〉

4-1-2-3

〈使用回数〉

30回


となっており、

シーズン開始前にはチームの最適フォーメーションを用意していたが、アクシデント(小野瀬移籍)で最適ではなくなり、別の最適フォーメーションの発見が遅れた、シーズンと言えるのかなと思います。

2019年に上位に入った2チームとは逆パターンですね。

選手の最適フォーメーションではなく、自身が理想とする最適フォーメーションに合う選手がいないと結果が出せない、という霜田監督の特徴がよく出たシーズンだったのかなと。


不穏な匂いを撒き散らしながらも無事に2年目の契約を勝ち取った2019年は、やはり悲惨なものとなってしまいました。


この年も元気に4-1-2-3でスタートしました。

ですが、システムなど無くとも理不尽に得点できていた3トップはもう解体されてます。

高井、山下、パウロでは高木、オナイウ、小野瀬の理不尽さを再現出来るはずもなく、第3節千葉戦で一人退場させた試合を除き第9節まで勝利がありませんでした。

第16節で再び伝家の宝刀「困ったら3-4-2-1」を抜き無双モードに入りますが、何故か途中で止め、4-2-3-1を使い始めます。

ここから特にawayで負けに負け、今年に入っても状況が改善されることはありませんでした。

2019年に上位に入った2チームのように、最適なフォーメーションを発見出来たのにも関わらず、自らそれを捨て勝利を目指さない姿勢に霜田ワールドを感じます。


この年は最適なフォーメーションの発見が遅れに遅れ、同じフォーメーションを20回以上使用することがありませんでした。


4バックフォーメーションで抱えた借金を、3バックフォーメーションで返していく。


そんなシーズンでした。


まー、結局は返済し始めていた3バックを止め、4バックに戻し借金生活に逆戻りしましたがね。





ここまで霜田体制となった2018年をざっと振り返りましたが、レノファが上位に入れない理由は、結論から書くと「最適なフォーメーションを使用しないから」と考察します。


霜田監督下で使用する「3-4-2-1」はめちゃくちゃ成績いいんですよね。


4バック(主に4-1-2-3)と3バック(主に3-4-2-1)で如実に結果が変わります。




【4バック】

43試合 14勝 12分 17敗 69得点 83失点


【3バック】

17試合 7勝 3分 7敗 26得点 22失点




と、3バックの試行回数が少ないですが、特筆すべきは得点・失点です。

4バック時には計算するのもうんざりなマイナスの得失点差ですが、3バック時にはプラスとなっています。


霜田監督の特徴として、フォーメーション・システムを正しく組めない、というものがあります。

今シーズンで言えば、浮田と武岡を右サイドで組ませたり(ワイドレーンは誰が使う?)、同じく右サイドで森と川井を組ませたり(ワイドレーンで被る)、左パウロ・右村田で起用したり(それぞれのハーフスペースは誰が使う?)。

まー、挙げたらキリが無いんですが、散々です。

山田、安在、サンドロ、真鍋、武岡のディフェンスラインで一体どうやってビルドアップするんだ、という起用や、ヘニキをアンカー起用しビルドアップさせたりと、システムもぐちゃぐちゃです。

基本的な陣形となるフォーメーション、攻守の際に変化する流動的な陣形となるシステムも組むのが苦手ということです。


なので5レーンも取れないし、ビルドアップも出来ない、プレスの開始位置や方法も仕込めないといった要因から、4バックでは全く結果が出ませんでした。

就任初年度は3トップが理不尽に得点できていたので問題が表面化してませんでしたが、解体された途端に結果が出なくなったのはそういった事情かと。


フォーメーションやシステムをある程度脳死状態でも機能させることが出来る3-4-2-1で結果が出たのも必然かなと。

(自然と5レーンが取れる。パスコースが多いフォーメーションです。)

霜田監督の実績上、なんのシステムも無い状態でありながら個の力だけで3バック時に結果出せてます。

レノファの選手、質は悪くありません。


結果を出せているフォーメーションがある。

そのフォーメーションを機能させうる選手たちは既にいる。

あとは最適なフォーメーションで、スタメン固定に足る選手を見つけていくだけ。


これだけの環境にありながら、今年も元気一杯、4バックなわけです。


レノファにスタメンに足るほどの個の力を有している選手は多くありません。

(ヘニキ、高、菊地、ギリギリ池上くらいでしょうか)

これは戦略(編成)上の話なので仕方ありません。

戦力不足を以下に戦術を持って補うか、です。

霜田監督体制となって3年経ちました。

未だに「自身が理想とする最適フォーメーション」を追い、それにかなう選手を「移籍・育てる」ことでしか現状を変えることが出来てません。

移籍→理不尽な選手。高い。ムリ。

育てる→時間が掛かる。霜田采配では育たない。ムリ。

と、霜田体制に手詰まりを感じます。




クラブは上手く編成していると感じてます。

(後日記事にしたいです)

クラブが良い素材を取ってきても、上手く調理してくれない 現場、というように見えます。

レノファ山口FCの受難です。

(そもそもそんな料理長と契約延長しなさんなよ、とは思いますが)